亀田青年のアッーーー！

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図書館という書物が滅茶苦茶にたくさんある施設で、
町田康という作家の随筆を2時間ほど読み、
レンタル屋でABBAのアルバムを借り、
ドラッグストヤーでボックスティシューを購入したりしていたら、
いつのまにか家に着いていた。

なんというか、別段やるべきこともなかったので、
テレビをつけてみたら、男二人が物凄い形相をして殴りあいをしていた。

なんだ、この野蛮な人間たちは！国はこの放送局をなぜ取り締まらんのだ！
愛に溢れる平和を非暴力で達成する、という尊（たっと）い目標を彼らは根底から陵辱しているのだぞ！

いかん、このままでは界隈に暴力が横溢し、
それによる負傷者、死亡者が続出し、
国の秩序がおおいに乱れてしまう！

国の崩壊を危惧したわたしはすぐさまその番組を垂れ流していたTBSに電話した。

「もすもす！
あ、TBSさんですか？
困りますよ、あんな暴力的な番組を垂れ流してもらっちゃ！

え？
これスポーツなの？

ウソ言ったらアカンよー、
僕を無知な一般人民と一緒にされたら困るよー？

スポーツってアレでしょ？
運動の事でしょ、日本語で言うところの。

でね、今テレビで垂れ流されている内容って、
これ運動っていうか、まぁ、ぶっちゃけ暴力なわけね。

もしさ、君の言う通り、殴りあいがスポーツってんなら、
僕は、道行く老人や糞餓鬼をぶん殴って、
『そんな顔で見なさんな。あんな、俺はすさまじく頭がいい上に優しさに溢れる男だから教えるけどね、殴るってのは、スポーツなの。テレビ局の人が教えてくれたから、ホントだよ。だから、俺は今、君とスポーツをしよう、って考えたわけね。さぁ、やろう。スポーツをやろう。こないなら、俺から殴るぜ？しばくぜ？』

みたいなことを言っても、許される事になるよ？
おかしいやん？そんなの。

だからね、殴り合い、ボコし合いがスポーツだなんて詭弁はもういいから、はやく放送を切り替えて、世界の車窓から、を放送しなさい。

じゃあ、頼んだよ。」

そう電話で言い終えた僕は、再びテレビジョンをつけた。
人と人とが醜い形相で、怒りに任せて拳で相手の顔をどつきまわす、という野蛮な番組は、僕の厳重なる忠告によって即刻に終わっているだろう、という強い期待を持って、
テレビジョンをつけた。

テレビジョンには、一人の青年が映っていた。

珍妙なヘヤースタイルをしていた。
頭部にパーマネントをかけているのはいいのだが、その髪の毛の長さが3cm.ほどで、尚且つ、モヒカンであったので、
パーマの持つ、お洒落という雰囲気とはほど遠く、
ただのチンピラにしか見えなかった。

で、そのチンピラの青年は、インタビューに答えていた。

僕は確信した。

先ほどの厳重かつ重要な忠告により、放送局はすぐさま試合内容をカットし、インタビューの部分だけを放送したのであると。

ふむふむ、まぁ、TBSにも良心ってのは残ってたんだね、うん。
と一人思いながら、彼のインタビューを聴いていた。

青年は咆哮した。

「どんなもんじゃアッーーーーーイ！」

なるほど、彼はホモだったんだな、と思って、テレビを消した。

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