君が泣くまで足すのをやめない。

就職難民！
それは俺！
今日も行って来た！企業の選考に！

しかし俺は目を疑ったね。試験の内容に。
なんとそこに待っていたのは足し算のテストッ！

一時間、延々と足し算だけを繰り返し続ける、拷問のような試験！

足す！
何度も何度も！
すばやく厳密に！
足し続けるツ！！！

聞くところによるとクレペリンだとかいう名前の試験だそうだ。集中力やら正確性やらをみるらしいが、あれはマジできついぜ、ラスコリーニコフ。

正直に心情を吐露しよう。
俺は、一気にこの企業に行きたくなくなった！
行かない！ここには、何があっても行かない！！そう決意したッ！！！

だってクレペリン試験で私たちに暗に伝えるメッセージが明白すぎますもん！
つまり「延々と同じ作業をやり続ける仕事です。」ってことでしょ？この足し算地獄が告げる、暗のメッセージは。

まじかよお。独創的かつエネルギッシュかつ芸術的かつモテモテな仕事したいんだよお、俺はよお！と嘆いた俺は、足し算中、涙に頬をぬらしながら顔を上げた。

そこには天使がいたよ…。
そうさ、人事のお姉さんがモナリザ並に美しかったんだよ…。
グッときたね、きたと言うか、盛り上がったというか、いや、心の熱い部分のことね、うん、グッと、こう、膨張したっていうか、オホン、ともかく、キた、って思ってね、「ここ入社してえ」って思ったんだよ…。不思議な体験だったよ。

涙は一秒で渇き、僕は本当にこれまでないってくらい熱中して足し続けたよ。自分でも思った。「俺、足し算のプロフェッショナルやな…」ってね。

気がついたら足し算フィーバータイムは終わっていた。
あまりに達成感。
ここで働きたい…と思っている自分に気づいたのは、
家に帰って人事のお姉さんをオカズに一人引き算をしている最中のことだった…。