平日の夕刻。紅く沈む空と、バチバチと灯りだす白い外灯。行き場をなくし、無為に流れる生ぬるい空気を浴びながら近くのスーパーに向かう。踏切りから一本道に続く道路を歩く。たいていの道路がそうであるように、特別に何の特徴のない道路だ。俺はその道を、ぼんやりと煙草を吸いながら、リーバイスのジーンズに片手を突っ込んで、影を伸ばし続けた。
スーパー手前の公園には湖があった。一周するのに300Mほど歩く必要がある。街の灯りと紅く滲む空を飲み込み、湖は鈍く光っていた。俺は何本目かの煙草を吸いながら、よくその湖を泳ぐ鯉をまるで他人事のように眺めていた。多分それが鱒であっても鰯であっても、蛙であっても、俺は同じように彼らを眺めていたと思う。
葱やら鳥のもも肉やらバスタの素や鰹節などの入ったビニール袋もって、墨汁を薄く引き伸ばしたような空をぼんやり眺めながら、帰路に着く。相変わらずうまくもない煙草を咥えて、踏切が開くのを待つ。横切る耳を貫く轟音。黒いスーツに身を包んだ『オトナ』がすし詰めになって運ばれていく。俺はそれをまるで鯉だとか鮎だとかそういったものを観るかのような目で眺め、煙草の吸殻をポイ捨てする。
結局のところ、俺は煙草を止めてしまったし、スーパーで葱を買うこともなくなってしまったし、平日に湖のほとりで鯉を眺めるようなこともなくなってしまった。ある種の諦めは、人生において仕方が無いのかもしれない。
スーパー手前の公園には湖があった。一周するのに300Mほど歩く必要がある。街の灯りと紅く滲む空を飲み込み、湖は鈍く光っていた。俺は何本目かの煙草を吸いながら、よくその湖を泳ぐ鯉をまるで他人事のように眺めていた。多分それが鱒であっても鰯であっても、蛙であっても、俺は同じように彼らを眺めていたと思う。
葱やら鳥のもも肉やらバスタの素や鰹節などの入ったビニール袋もって、墨汁を薄く引き伸ばしたような空をぼんやり眺めながら、帰路に着く。相変わらずうまくもない煙草を咥えて、踏切が開くのを待つ。横切る耳を貫く轟音。黒いスーツに身を包んだ『オトナ』がすし詰めになって運ばれていく。俺はそれをまるで鯉だとか鮎だとかそういったものを観るかのような目で眺め、煙草の吸殻をポイ捨てする。
結局のところ、俺は煙草を止めてしまったし、スーパーで葱を買うこともなくなってしまったし、平日に湖のほとりで鯉を眺めるようなこともなくなってしまった。ある種の諦めは、人生において仕方が無いのかもしれない。
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